映画の感想:第13回目『プラットフォーム』
映画の感想、実に1年振りになりますね。
アクセス数を見る限り世間の需要は画質・音質にあるようなのでそちらが中心になっていました(記事が投稿されるとは言っていない)
という訳で久々です。
縦に長い建物、真ん中には四角い穴。
部屋には自分と知らない人が2人ペアで収容されている。
そして天井の穴からは料理が乗った宙に浮く机(?)が下りてくる。
上の者から食事をしていくので下の階層に行けば行くほど・・・。
1か月に一度部屋の入れ替わりがあり、先月悲惨な階層でも当月は最上階もあり得る。勿論その逆も。
同部屋の相方は基本変更無し。そんな状況でのサバイバル。
あらすじ書くの下手ですね~。でも大体こんな感じなんです、本当に。
好き度:6
推奨度:8
○好き度
まずその突飛な世界観に惹かれました。
本作もいわゆるシチュエーションスリラーというジャンルになると思うんですが、
この手の映画って出オチになりがちなんですよね。
でも本作はかなり頑張ったと思います。
というのもあの建物そのものにしっかりと製作者の想いを込めていたからです。
ネタバレにもなりかねないので本項で記述するのは避けますがそこは見事だと思います。
〇推奨度
今現在の日本人に観て欲しいと思いました。
現代ではないです、現在です。
これも詳しく書くとネタバレになるので避けます。
あとこの手の映画にあるあるなエグい描写もかなりあるので苦手な人は注意が必要です。
以下ネタバレです。
〇ネタバレ
机(?)一杯に綺麗に盛り付けられた沢山の食事。見事なものです。
それを上の階層から順繰りに食べていき残った物を下の階層の人間が食べる。
これでもかといった具合に「資本主義」を皮肉った内容ですよね。
富む者は必要以上に食べ太り、貧する者はひもじさを強いられ他人と争うといった具合です。
政治的な話は忌避されがちですが本作はモチーフがモチーフなだけにそれを避けて感想を述べる事は不可能です。
そしてもう一つキリスト教の思想も盛り盛りなのですが私はキリスト教徒でも知識のある人間でもないので割愛させてください。
さて、本作の感想を鑑賞後に漁ってた際、「これは政府不在の社会を描いている」と評する感想を見つけました。
いわれてみれば確かにそうです。あそこはルールが無い言わば無政府状態な所でした。
食べる量は決められてませんし、食事にツバを吐いても咎められる事はありません。
その他にも殺人しようが食人しようが何の罪にもなりません。恐ろしい場所です。
もしあの場に政府という社会のコントロール役がいれば全く別の世界になっていたはずです。
これはまさに「市場(民間)に任せときゃ万事オッケー、政府は余計な口出し(規制や税金徴取)すんじゃねえ!」という「新自由主義」をボコボコに皮肉る構図です。
先日総理に就任された岸田さんが「新自由主義の否定」で話題になってましたが、
出オチになりがちなシチュエーションスリラーですが本作は大健闘したと思います。
それはやはり製作陣の「これを伝えたい!」という強い想いと、
それを描写するだけの見事な技術があったからこそだと思います。
ただ名作かと言われると…。「意欲作」と評するのが良いでしょう。
背景(建物の外や人物の過去)を描いたのは良いんですがちょっと描写が少な過ぎ感がありました。
同ジャンルの大傑作CUBEみたいに一切描かないという方針は恐らく無理でしょう。
「気付いたら連れて来られていた」系はもう巷に飽和してますからね。
その時点で低評価を下す人が出てきかねません。
なのでもっと主人公を始め他に人物たちにもしっかりと背景を持たせるべきだったと思います。
あとあの設定で300階層は無理がありますね。
「それほどに深くて恐ろしい」という意味なんでしょうけどやり過ぎです。
相方を食べて生き延びるにせよ冷蔵庫もないのに一月もどうやって腐らせずにおいておくんでしょう。
あとトイレや風呂は?まさかフリーフォールですか?
というように些細な事が気になってしまって減点していった結果が6点なんです。
でも資本主義(というか新自由主義)への皮肉り方は鮮やかかつ見事だったのでそこは評価したいです。
まさに現在の日本人にお薦めですね。
あとシチュエーションがユニークでした。これもプラスですね。
余談ですがDVDなのに画質が良かったです。